絵本で育む豊かでしなかやかな感情と想像力を求めて
身近な動物、見たこともない生き物。
不思議な体験。
夢のような空想の世界。
現実なんだけれども、考えてみたことのなかった視点。
色鮮やかな色彩とともに、
まだ子供が見たことのないはじめてのストーリーに出会う場所。
映画やアニメ、ドラマを最後まで見るのは集中力が持たない子でも
5分で読めてしまう絵本なら、次々に別のドアを開けるようにたくさんの世界に触れることが出来ます。
そんな素晴らしい絵本を今回も5冊選んでみました!
いろいろいっぱい ちきゅうのさまざまないきもの
ニコラ・デイビス 文 Nicola Davies
エミリー・サットン 絵 Emily Sutton
越智典子 訳
本体1,500円(税別)
出版者:ゴブリン書房
出版年:2017/02
いろいろ いっぱい: ちきゅうの さまざまな いきもの 大型本 – 2017/3/1 ニコラ デイビス (著), エミリー サットン (イラスト), Nicola Davies (原著), & 2 その他
「科学絵本」というジャンルの絵本です。
身近にいるいきものというよりは
大人でも知らないような、多種多様ないきものが
鮮やかに華やかな色味で描かれます。
絵本になった図鑑といった具合。
普段日本で暮らす中では出会うことのない様々な生き物。
人間の目では見ることの出来ない場所に住む生き物。
地球から絶滅し、もう二度と出会うことの出来ない生き物。
動物学を専攻したという作者の視点は、動物を通してこの世界の
無限の可能性を教え、この地球の生き物の多様性こそ豊かさであり
私達が、破壊してはいけないものなのだというメッセージを投げかけます。
これだけ多種多様な生き物がいるということは、
地球上の生物は多様性をキーに生き残ってきたのではないか。
それと同じことが言えるならば、
私達人間もまた、固定観念に縛られることなく、カテゴライズされることなく、
ビビットな個性を発揮しあってカラフルに共存することができるのかもしれない。
そんな希望が湧いてくる絵本だ。
おばけとしょかん
著者 :デイヴィッド・メリング (イギリス生まれ) David Melling
訳者:山口文生
出版者:評論社
出版年:2005/09
本体価格: ¥1,400 +税
「おばけ」とありますが、怖い話じゃありません。
「おばけ」という夜の住人たち。
とても人懐っこくて、いろんなお話を聞きたがっている愛らしいおばけたち。
主人公の「ボー」は本がだいすき。
そんな素質を見込まれてか、おばけたちがボーの部屋にやってきて・・・
人間がもつ「おはなし」への欲求。
知らないことが知りたい。
いろんな世界を覗いてみたい。
おばけたちはそんな願望の化身のよう。
この世は「おはなし」で溢れている。
それを作る人。読む人。聞く人。
「おはなし」に人が集まってくる。
きっと絵本が大好きなこには共感できるストーリーです。
途中アニメーションのような、文章のないページがあり
「何をしているのかな?」と子供と一緒に考えながら読みすすめるのも楽しい一冊です。
かわいいことりさん
著者 :クリスチャン・アールセン kristien Aertssen (ベルギー ゲント在住)
訳者:石津ちひろ
出版者:光村教育図書
出版年:2008/09
本体価格: ¥1,500 +税
たくさんの鳥たちと幸せに暮す夫婦のラブストーリーです。
この絵本は、絵がとっても可愛らしく愛嬌たっぷり。
お互いが大好きな、おじいさんとおばあさんと、
そこに週末遊びに来る孫のチェリー。
そしていつも、この家とともに暮らすたくさんの美しい鳥たち。
おじいさんが「かわいいことりさん」とよんでいたおくさんが旅立ってしまい・・・
愛する人を失う悲しみを人はどうやって乗り越えられるだろう。
何も感じない。心を閉ざして大好きだった鳥の声すら聞こえなくなってしまったおじいさん。
おじいさんが、ある日気づいた「愛するもの」の居場所とは??
人を愛することとは自分を取り巻く全てを愛することだと、そう気づいた時
失ったものを超えて再び人生が輝き出す。
そんな大人にこそ読んでほしい、切なくてあたたかいラブストーリーな絵本です。
きょうは、おおかみ
著者 :キョウ・マクレア Kyo Maclear
英国生まれ 美術評論家 小説家
絵:イザベル・アーセノー Isabelle Arsenault
カナダが誇る最高のイラストレーター
訳:小島明子
広島県生まれ
出版者:きじとら出版
出版年:2015/03
本体価格: ¥1,800 +税
第20回いたばし国際絵本翻訳大賞 受賞作
カナダ総督文学賞児童部門受賞
ゆううつな妹と、そんな妹を
なんとか笑顔にしようと頑張る姉の姉妹物語。
子供には子供の憂鬱がある。
いつも楽しく遊んでいられるわけではない。
そんな気持ちの浮き沈みにどう対処したらよいか。
それを大人になる過程で、一つ一つ学んで自分の取扱説明書が出来上がってくれば人生は随分楽になるものだが、
まだ生まれて数年しかたっていない子供にとっては、常にデータ不足の状況が起きる。
そんな「いやいや期」の絶頂のような状態に陥ってしまった妹。
なんとかしてあげたい姉は、話を聞いてあげて、
妹の好きなものを絵にしていく。
まるでイライラしたおおかみみたいになってしまった妹を、
責めたりせずに受け止めて、なんとか対処法を考える。
大人になったってイライラをぶつけてくる人というのはいるもので、(自分もぶつける側になる日だってある。)
そんな時、人間関係を破綻させずに強くしなやかに向き合うことが出来たなら。
イライラしている人も苦しいんだ。
どう、向き合うことができるだろう?
そんなことを考えさせててくれる絵本です。
キリンがくる日
著者 :志茂田 景樹
絵 :木島 誠悟
出版者:ポプラ社
出版年:2013/08
本体価格: ¥1,300 +税
あの、直木賞受賞作家でタレントの志茂田景樹
景樹さんの絵本です。
絵本の読み聞かせが子供たちに与える感受性。
その結果思考の偏りがなくなりいじめが減るという。
そして、声に出して読む大人にも、精神的に前向きになる効果があるという。
そんな絵本の読み聞かせを推奨している志茂田景樹さん。
この絵本は、動物園の存在意義を問いながら
動物がどうやって遠い国から日本へとやってくるのか。
私達が、街に作られた動物園で
生きている動物を見ることにどんな意味があるのか。
それを考えさせてくれます。
いつでも行けると思うと、なかなか行かなくなっていたけれど
久しぶりに地元の動物園に行ってみたくなりました。
園長さんが少年に語る、言葉に思わずほろっとしました。
生きようとする命の強さ。輝き。
そこから私達人間は何を学べるのか?
もしかしたら「生きること」その素晴らしさを思い出すために、大人にこそ動物園は必要なのかもしれない。
忙しく過ごしてしまう現実の中で
卑しくも、何かを成し遂げようと躍起になってしまうこともある。
けれどもどんなときも
シンプルに「生きること」その生命だけで動物も人間も輝いていると
そう忘れずにいたいものだ。