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急なショートエッセイ「ボールペンと才能の残量」

ペン ノート 文具 ショートエッセイ

「ボールペンと才能の残量」

 

出なくなったお気に入りのボールペン。

芯を見たらまだインクは8割入っている。

替芯ならストックはある。

でもまだこんなにインクが入っているのに

替えるなんて、なんかもやる。

ぐるぐるぐるぐる・・・

裏紙を切ってあるメモ用紙に、ペン先を擦り付ける。

筆圧の跡がつくだけで、インクの色はでてこない。

1枚

2枚

3枚

4枚

少し色が出たかと思えばまた掠れる。

ボール部分に溜まっていたカスみたいなものが、

紙の上にでてくるだけ。

色のつかない無意味な軌道を生み出し続けることにだんだんと虚しさがつのる。

時間もかかるし、右手が痛くなってくるし。

さっさと新しい替芯に変えればいいんだけど。

力いっぱい擦りつけたからといって、インクがでるわけではないのに

意地になって、力が入る。

でも、この止まってしまったペン先には

今、摩擦熱が必要なんだ。

はっきり言って仕事はこの数ヶ月上手くいっていない。

自分なりにあらゆる努力を試したことが、結果と結びつかないことで、私は想像以上に疲弊していた。

もう、道を変えようか。

でももし、この出なくなったペン芯のように

まだまだ私の才能というインクが枯渇していないとしたら?

ペンを軽く分解して、インクの残量を確認するように、私の才能があとどれくらいあるのかはっきりと目視することは出来ない。

ぐるぐるぐる・・・

今やこの詰まったペン先に私の運命のすべてがかかっていた。

ボールペンにしてみれば、

「いや、たかだか数百円の私にそんな重い責任を負わすなよ」と、呆れるほどに強くなる筆圧。

もし、もう出ないのではなく、詰まっているだけなら。

その仮定が、私には希望に思えてきた。

すー カラカラ すーー カラ すーーーー

インクがでるペースが長くなってきた

30分後

カラカラ スススススススーーーーーーーーー

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

部屋の中で一人、声にならない声で歓喜する。

まだ、出るんだ。

キレイなツヤのあるインクの黒が戻ってきた。

右手がじんじんしている。

「まだやれるよ」と言っているみたいに。

 
 
 

お気に入りのボールペン 5選

①FRIXION 0.4 (PILOT)

紙に書いている!という感覚が手に心地よく伝わりながらも、すべるようにうるおいのあるインクで、このペンで書くことが楽しいと思える。この書き心地を味わいたいがために、無駄に長く文章を書いてしまったりもする。このテクスチャ-で、消えないものもあれば天国。

②uni-ball one 0.38 (三菱鉛筆)

ほんとにくっきり書ける。ブレずに書ける。デザインもシンプルで大好き。黒のつや消しボディが格好良い!

③ SARASA DRY 0.5 (ZEBRA)

書いてすぐの、「あ゛っ」という紙上の絶望をなくしてくれた天才。すぐ乾くその素晴らしさに今日も感謝。

④ ICリキッドボールペン 0.5 (セーラー萬年筆)

万年筆で書いているように、濃いーーーいインクが、ノートの上に黒光りする存在感を放つ。 グリップが太めで滑り止め効果が高く、安定して書き続けられて、疲れない。 推敲を重ねたり、メモ書きにするというよりは清書に使いたい、本気用。

⑤ ENERGEL 0.5 (Pentel)

カラーインクもセンスの良い発色で、インクが替えどきを知らないほど長持ちする。みずみずしい感触で、気持ち良く文章が書ける上に、スタイリッシュなボディ。ターコイズブルーがおすすめ。

結論

とにかく、波々としたインクを感じてなめらかに途切れず濃く書き続けられるペンが大好きです!