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朝井リョウエッセイ3部作「時をかけるゆとり」「風と共にゆとりぬ」「そして誰もゆとらなくなった」と「発注いただきました!」その自意識の世界。

エッセイ

朝井リョウさん漬けになる。

私が本を読む時間。本に求めるもの。

私が本を読むのは、ほとんどが寝る前の時間。

資料的に読み込むとかじゃなくて

単純に自分の楽しみとして読む時間。

 

そのチョイスはとても重要で

日中に重めの話に浸かり過ぎたり

脳を酷使した日にはふわっと緊張を解いてくれるような

くすっと笑えるエッセイや漫画が読みたくなる。

 

恋愛系の文章を書いている期間は

寝るときにもそのムードを壊さないように

恋愛小説や漫画を読む。

恋愛モードの熱は、入れっぱなしにする必要がある。

決して冷ましてはならない。

 

そして、仕事がうまく進んでいない時

のし上がっていく系の話を書く時。

熱量高めに生きる必要があるときはまさに

島本先生の作品を中心に

バトルモードに突入できるような作品を読む。

(安眠効果はない。)

名探偵コナンファンが島本和彦にハマった話:後編(アオイホノオ・燃えよペン・吼えろペン)

作品の面白さに癒やされるのはもちろんのこと

この日本のどこかで

こんなに巧みな語彙力で、表現で、

面白おかしい話、感動する話が今日もうみだされている。

その事実を何度でも確かめたい。

 

そういった、作家の生み出すエネルギーを浴びることで

ありがたいことに次の日の創作意欲が確保される。

初夏、朝井リョウさんまみれになる。

今年の初夏、私は朝井リョウさんまみれだった。

寝るときには気分を引きずりたくないダークモードのお話を書いていたので

夜の私は笑いを欲していた。

 

一番最初に手にしたのは

「風と共にゆとりぬ」

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作家物のエッセイを書店で色々とさがしていて、

何も考えずに手にしたけれど

なんとエッセイ3部作の真ん中の本だった。

時系列的にはおかしいけれど、まあいい。

細かいことは気にしない。

朝井リョウさんのエッセイ3部作 一覧

①時をかけるゆとり 2012年(単行本)2014年(文庫本)改題

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「学生時代にやらなくてもいい20のこと」として

2012年出版のエッセイ集を改題『時をかけるゆとり』として

2014年文春文庫より出版。文庫版にのみ新作3作追加。

②風と共にゆとりぬ 2017年(単行本)2020年(文庫本)

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「別冊文藝春秋」「日本経済新聞 プロムナード」

に掲載されたエッセイの他に描き下ろし追加。

③そして誰もゆとらなくなった 2022年(単行本)

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エッセイ3部作完結編が2022年08月08日に発売されました。

私はまだ未読。早く読みたい!

「風と共にゆとりぬ」朝井リョウ脳内劇場へと入場する。

「風と共にゆとりぬ」は、掛かり付けの眼科医との

因縁の診察から関係性が発展してしまう話から始まる。

 

そして、朝井一家の低温すぎるハワイ旅行。

同じく作家の柚木麻子さんと挑む、担当税理士の結婚式での本気の余興。

レンタル彼氏と演技対決。などなど

 

日常はこんなにも躍動感あふれるものになりうるのかというような

濃く激しい体験の数々。

 

そのすべてを、朝井さんの脳内劇場を言語化した

自意識に溢れる語りによって

私たちは追随体験を許される。

 

物事を出来事をどう捉えているのか。

内側に巻き起こる感情のほとばしりの密度。

 

一家揃ってリアクションの薄い朝井家から

こんなにも感受性豊かな作家がうまれた不思議。

 

ページを追うごとに、この人間味に満ちた日常と

やはりぶっ飛んでいると言わざるをえない発想と行動に

朝井さんの日々をくれ!もっとくれ!と供給を求めてしまう。

 

 

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「時をかけるゆとり」圧倒的に無意味だったのに意味がある青春。

こちらが朝井リョウさんの初エッセイとなる「時をかけるゆとり」。

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私は読む順番が前後してしまったが、

逆に「風と共にゆとりぬ」の前日譚として楽しむ事ができた。

漫画家プロ編「吼えろペン」を読んだあとに青春譚「アオイホノオ」を読むという流れは

むしろ私に馴染んでいる。

朝井リョウとは

大学2年時に『桐島、部活やめるってよ』で

第22回小説すばる新人賞を受賞し在学中に作家デビュー。

その後就職活動を経て社会人となり兼業作家に。

(現在はもう専業作家に。会社員を辞める頃の経緯も「風と共にゆとりぬ」で読めます。)

そして社会人1年目にして2013年に

『何者』で平成生まれの作家として初となる

第148回直木三十五賞を受賞した。

(男性受賞者としては最年少。)

そんな朝井さんだからこそ成立する

学生時代が撮って出しのごとく鮮明に煌めくエッセイ執筆。

学生時代。もう戻らない無鉄砲な日々。

大学生時代に体験したその時はむしろ無意味に思えて

でも、大人になってからもうそんな無鉄砲な日々は戻らないというような貴重な足跡。

担当美容師に舐められちゃうカットモデル。

北海道にたどり着けない旅行計画。

御蔵島にたどり着けないフェリーの旅。

例の眼科医との衝突。

そして就職活動。

そんなくだらなくも尊い学生時代の記憶が

エッセイとなる。

京都まで自転車で行くときにどの峠が一番体感でキツかったかとか。

聞きかじる知識とは違う

本当に自分の体で体験したという大事な記録。

多くの人の中では、こんな風に振り返ることも段々なくなって

詳細がわからなくなっていくうちに遠い記憶になってしまう。

自分の体験とはまるで違うのに、このエッセイを読むと

色んな記憶が呼び戻される。

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旅行の計画も、綿密にというよりは

行き当たりばったりでどこまで乗り切れるかということに

無駄に挑戦してスリルを味わっていた。

 

真剣に考え始めるのは前日、むしろ日付を超えてもはや当日。

 

「大変」とか「疲れそう」とかいう尺度がまるでない

無敵の体力。

 

だいたい予想できることよりも、未知に溢れているものに

駆り立てられるどうしようもない冒険精神。

 

私にもそんな、無謀な日々が確かにあったこと。

無茶できる時に無茶しておくことも

とても貴重であったのだと、若き日々を懐かしく胸に蘇らせた。

 

発注いただきました! (様々な企業からの発注によるエッセイ+小説)

そして、次に読んだのがこちら。

 

 

森永製菓ーキャラメルが登場するお話

アサヒビールー「ウイスキーって、おもしろい」を伝える

KADOKAWAーaikoの楽曲を題材にした小説

 

のように、実際に有名企業からの発注書があり

それを受けて朝井リョウさんが小説・エッセイを執筆。

その本文のあと、本人の感想戦も読める。

 

と、タイアップ執筆の流れをリアルに味わえる面白い作品集。

 

ミュージシャンがタイアップで書き下ろす楽曲のように

各企業が自信を持って売出していくとっておきの商品を輝かせる。

さらにはその魅力に新たな価値を生み出すような物語づくり。

 

例えばアサヒビールの発注に応えた

「蜜柑ひとつぶん外れて」というウイスキーにまつわるお話は

数あるお酒の中でウイスキーを愛している人間の魅力が

しっかり伝わる素敵な作品。

 

KADOKAWA発注のaikoの楽曲を題材にした小説は

「アスパラ」という曲をテーマにした作品。

原曲の歌詞には実はでてこない「アスパラ」を

しっかり登場させ、さらに首筋、産毛、あたし、

みたいなaikoワードも散りばめたこだわりの世界感。

 

そして本編を締めるラストの

集英社発注の「受賞」をテーマにした新作。

この「贋作」という作品は、

本当に圧倒された。

謙虚という言葉が持つ

良しとされる風潮と、そこに漂う嘘の気配。

それを見事に浮き上がらせ、人の心をざわめかせる。

何を信じればいい。

謙虚は目指すべきものか。

褒められるべきものか。

ただ「自分を良く見せよう」という手段に成り果てていないか。

そんな問を突きつける、さすがのざわめき職人という作品だ。

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自意識とは作家性なのかもしれない。

自意識。

自己が他人や外界に触れてなおさら感じる自我。

ちょうどこの頃この本を読んでいた。

自意識が強い、とはあまり推奨されないような

雰囲気を持つ言葉だが

作家にとってはそれが自分らしい感情の発露で

眼の前の出来事に対する

語彙力をふんだんに駆使した

脳内の実況中継は

それ自体が現実を自分の言葉で捉える力となり

あらゆる角度から検証し始めるような

執着心さえもクリエイティビティとは切っても切れないものだろう。

 

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周りの同業者に対するライバル心だったり、

俯瞰で観た自分に対する猛省であったり。

 

特に「ゆとり世代」といわれる世代の特徴でもある

完璧主義ゆえの巨大な自我。

ともすれば自分を責めがちなまでの自己反省。

 

そんな消費カロリー高めの意識の活動。

省エネの対極であるが浪費ではない。

 

この自意識こそが、

自ずとその技巧を高みへと導いていく巨大なエネルギーになる。

 

今回気づいたことは、

私は島本和彦先生をはじめ、構成作家のオークラさん、

そして朝井リョウさん。

という

この「自意識」を作品に昇華させながら

さらに、作品になる前の脳内劇場までもを

熱く、面白く見せてくれる作家さんが大好きであるということ。

 

その語られる日々が面白おかしいのはもちろん

自分へのツッコミの卓越した面白さが

自意識によって日常的に鍛え上げられた

自分との一人漫才という鍛錬の賜なのではないか。

 

そんなことを思う2022年の夏であった。

 

さくらももこさんのエッセイに憧れて

ところでこの面白おかしいエッセイ集。

朝井リョウさんがかねてから憧れを抱く

さくらももこさんのエッセイ集(『もものかんづめ』『さるのこしかけ』『たいのおかしら』という三部作)を目指して書かれているということだ。

その意味で今回最新作「そして誰もゆとらなくなった」が三部作のラストという位置づけなのかもしれないが、

朝井さんが生きている限り

爆笑必至のエッセイのネタは日々うまれ続けるだろう。

どうかその秀逸脳内劇を、私達読者にまた披露しておすそ分けしてほしい。

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