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感情的に生きることはプラスか?マイナスか?「人は感情によって進化した 人類を生き残らせた心の仕組み」(書評ブログ)

メンタル

「人は感情によって進化した 人類を生き残らせた心の仕組み」   石川幹人

「人は感情によって進化した 人類を生き残らせた心の仕組み」 ディスカヴァー携書

は2011年に出版された明治大学教授・石川幹人さんの著書です。

わかりやすく読みやすく、読者に「感情」の謎について解き明かしてくれています。

本記事は、要約・抜粋ではなく、この本を読む体験の中で考えを巡らせたこと、自分の中で噛み砕いた要素なので

実際の知識は是非書籍から純粋に獲得していただきたいと思います。

(書評としていますが、ほぼ感想文です。)

208ページと、コンパクトでさくっと読める内容なので、読書慣れしていれば3時間かからず読めると思います。

「感情」は私達を生き残らせるためのセンサー

子供の頃は素直に表現していた自分の感情。

怒ったり、泣いたり、はしゃいだり。

しかし大人になる過程で、

例えばトランプゲームで手札を読ませないためにポーカーフェイスを身につけるなど

感情を見せないことが得策になることも私達は習得していく。

心を穏やかに保ち、冷静でいられれば判断力は上がる。

しかしその判断の基準になっているものとは?

この仕事が成功すれば「嬉しい」

大切な仲間を傷つけることを言ってしまえば「罪悪感」に支配される。

パートナーが浮気して自分をないがしろにすれば「怒り」を覚える。

すべての人生において

「起こってほしいこと」と

「起こってほしくないこと」

その基準となるのが「感情」というセンサーです。

 

すべては人類史上の「経験」から「獲得」された生存戦略

ひとえに「人類」と言っても、

ジャングルで獲物を狩りながら生きる人と

大企業で昇進を目指す人とでは戦略は違う。

 

ジャングルを生き抜くには

第一に肉体の強靭さが物を言う。

何十年先もの計画よりも

その日その日の食料獲得での結果を出すことが求められる。

その場合、うまく獲物が取れなかったことに「怒り」、大量に食料が調達できたことに「歓喜」し「安堵」する。

しかし過程は違っていても「感情」を基準にした成功の判断は現代社会とも通じている。

自分の実力が認められ、昇進すれば「歓喜」し「安堵」する。

それは当面の資金の確保を意味し、未来の財産拡大を想起させ、食料や居住の確保とイコールだ。

私達には、長い遺伝子の記憶の中で、この喜びを目指していけば生き残る確率が上がると、本能的に理解していることがある。

それを「感情」というセンサーを使って、私達に道筋を示唆してくれているのではないか。

そう思うと「感情」とは先祖からの知恵の授かりであり

何世代にも渡るもう名前も顔も遡れないような時代からの先祖たちが現代の私達を応援してくれているようにも感じてくる。

「マイナスな感情」などないとわかった。

悲しみ・怒り・屈辱・敗北感・・・

およそできれば感じたくはないなあと思うような感情も

この本を読めば、大いに自分にとって必要で

人生にとって有用なことだとわかる。

そもそも、「そんなのはいやだ!」という感情があるから私達はその可能性を回避しようと決意できる。

欅坂46 の「不協和音」で平手友梨奈さんが叫ぶあのセリフ 

 僕は嫌だ

出典 不協和音 作詞 秋元康

がとてもイメージにぴったりなのですが

「このまま流れに飲まれてしまっては自分が生き残れない」

そういった生存戦略を行動に移すための感情の発露ともいえるのではないでしょうか。

孤独になる「悲しみ」を回避して人との結びつきを求め

目標が達成できない「敗北感」を回避するために努力する。

一方で心許せる人と時間を共有できる「喜び」を

大好きなアーティストの歌をライブで聞ける「嬉しさ」を追い求めながら

危機的状況を回避していく。

その全てを理性的に論理的に考えていては、私達の脳の処理能力は追いつかないほど

人生には瞬間瞬間の選択肢が多すぎる。

だから「感情」というセンサーでぱっぱっと判断していく。

そんなかなり合理的で画期的な回路が自分たちに備わっていると自覚できるなら

毎日はより生きやすくなるのかもしれない。

現代の「感情」の捉え方が何故複雑になっていくのか?

都会的な、大企業的な人間関係に疲れ

人里離れた山奥でシンプルな人間関係を求める若者を取り上げたテレビ番組があった。

朝日放送「ポツンと一軒家」

シンプルな人間関係の中に居られれば、もっと感情もシンプルになれる。

自分の家族。

日々家族が暮らしていけるだけの作物を作る仕事。

近所の人々との関わり。

おそらく戦後あたりまでは当たり前だった暮らし。

 

しかし「自分にまつわる人々」の範囲は

広がり続ける。

自分の家族と

その家族の関わる学校・勤務先・習い事の仲間・同じアニメが好きな仲間・・・

さらに、SNS のフォロワーやフォロワーじゃなくとも、一瞬タイムラインに流れて目にした人など・・・

地球上に爆発的に増えた人口の分だけ

「関わり」の数は増えていく。

「集団」で生き残ることを選んだ人類にとって、他者との関わりは重要な課題であるとともにストレスだ。

「他者」を優先すべきか「自己」を優先すべきかの選択に常に迫られることになる。

圧倒的な数として

77億人の「他者」より「自己」1人を優先するのは難しいのではないだろうか。

他者と自己の間で揺れる「感情」の行く末とは

相互監視システムが働くおかげで保たれている平和。

その恩恵の中にいると思えば、自己中心的に生きることはとても難しい。

いくつ日々に感情を押し殺していることか。

けれども、立ち止まって考えてみる。

自分ひとりの「幸せ」を追い求めることの重要性を。

自分の幸せがわからない人間に、他者を幸せにする力があるのだろうか。

77億人の他者に匹敵するくらい、今ここにいるたった1人の幸せを実現することは重要なのではないか。

ジャングルの時代から現代まで、その時その時の生存戦略があったはず。

きっとこれからも、共通項はあるにしろ、最善の方法は変わっていく。

けれども、常に自分に湧き上がる感情に照らし合わせながら、他者との共存の道を探っていく。

そんな葛藤の幾重もの積み重なりでできた道標が、いつか未来の世代に受け渡されていくのなら、

今目の前の葛藤さえも、価値があると思える。

そんな「感情」にまつわる人類のお話。

あなたはどう読みますか?

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