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水川あさみ主演ドラマ原作・村山由佳著「ダブル・ファンタジー上下巻」「ミルク・アンド・ハニー」に溺れる。:前編

ドラマ

水川あさみ主演ドラマ原作・村山由佳著「ダブル・ファンタジー上下巻」「ミルク・アンド・ハニー」に溺れる:前編(東京女子図鑑とワクチンと)

 

 

二回目のワクチンの日。

私は決意を固めていた。

一回目の摂取直後あまり変化がないことに安心して、

作業を入れてしまったことで、結局副反応が長引いてしまった。

今度は、じっとしている。

なんなら、本を持つ腕も休めたいほど。

それで、しばらく観るだけでずっと過ごせるようなドラマはないかなと探していた。

そこで見つけたのが「東京女子図鑑」だった。

東京女子図鑑 水川あさみさんの引き込み力

水川あさみさんが主演のドラマ。

秋田で、都会暮らしを夢見る女の子が、

上京して、キャリアを積んで、恋愛も重ねて行って・・・

という、23歳から40歳までのかなり長い過程を水川あさみさんが見事に演じきっている。

(高校生時代は、別の役者さん)

一体いつになったら幸せになれるのか。

雑誌の1ヶ月コーディネートのように、

恋も仕事も充実させるなんてことは可能なのか?

仕事のキャリアは努力次第で積んで行けても

こと恋愛のステップアップは・・・むしろ経験が邪魔することさえある。

そんな、「あるある」と頷いてしまうようなリアルさに、あっという間に11話見終わってしまった。

なんだか、水川あさみさんという役者さんの

体温まで伝わってくるような、漂わせている香りまで嗅げてしまいそうな

観ている者に体験させるような引き込み方に、ぐわっと心を持っていかれた。

恋も、仕事も、憧れが強ければ強いほど、現実がそこに追いつくのは大変困難になる。

想像力が豊かなほど、そのギャップは起こりうるのではないだろうか。

求める刺激のなにもない田舎で、都会には憧れるすべてがあると信じ込んでいた少女。

恋も、仕事も遠く憧れの東京に全部ある。

そう思って、膨れに膨れ上がった期待を、

現実に都会に住みだした自分が掴むことは、想像を遥かに超えてハードなものだった。

そんな日々自分の人生に体当りしていく主人公を追いかけているうちに、水川あさみさんと一緒に、23歳から40歳までを一気に駆け抜けてしまったような達成感があった。

そして「ダブル・ファンタジー」へ

だが足りない!

このような女の生き様を見せてくれるドラマをもっと見たい!

大事に大事をとって、ワクチン後3日間も休暇にしてしまったのだ。

私の脳はまだまだ視聴するぞというスタンスでいる。

そこで、冷めやらぬままに東京女子図鑑の感想ツイートを漁っている中で、

「ダブル・ファンタジー」というキーワードに出会った。

同じく水川あさみさん主演のドラマだ。

よし、次はこれをみよう。

もうこの休暇は水川あさみ漬けになってやるんだ私は!

「ダブル・ファンタジー」に引きずり込まれる

※以下、ネタバレを含みますので未読・未視聴の方はお気をつけください!

人気脚本家の高遠ナツメ(奈津)は35歳。

「東京女子図鑑」とは違って、仕事では既に確固たる地位を築いているし、サポートしてくれる専業主夫の夫もいる。

そして高遠ナツメの特徴。

性欲が強い。

自身も自覚し、夫も知ってはいるがその欲を満たせないでいるほどに。

この物語は、数々の男性と体を重ねながら、

心まで満たされるようなセックスには何が必要なのか。

自由と幸せは両立するのか。

自分を本当に満たしてくれる相手は存在するのか。

恋愛とは、お互いに幻想を観ている間の夢物語なのか。

綺麗事で誤魔化すことなく、脚本家高遠ナツメの体当たりの日々の描写によって濃密に描き出しています。

高遠ナツメは誤魔化さない

脚本家であるからなのだろうか。

自分自身がたった今リアルに感じていることを、うやむやにはしない。

旦那との夜の生活に1ミリも満足していなくても、

「でも、きっとこれが幸せのカタチなんだよね。」

「支え合い、寄り添い会えるだけでも、多くを求めないことも関係を続けるには必要だよね。」

などと、それこそ「幸せ」という名の幻想に無理矢理にでも収まって、自分の本当の欲求に蓋をする。などということは出来ない。

なぜなら、人間の心理を捉えながら描いていく「ドラマ」を作っている脚本家として、

自分の内に湧き上がるリアルな感情を、じっくり分析こそすれ、

結論先にありきで感情をないがしろにするなどということは、

創作の質にまで及んでくる害悪なのだ。

自分の感情をうやむやにすることで、脚本における書き味の鋭さが鈍る。

今ある感情にどうやって納得する答えを出せるのか。

高遠ナツメの日々は、全てが本気だ。

奈津をめぐる男たち

志澤一狼太 ドラマ版:村上 弘明

志澤一狼太は、奈津の尊敬する大御所演出家だ。

メールでの長文を送り合うという、日々を重ね

心と心が徐々ににじり寄って、

お互いへのベクトルが温まりきってからの再会は

奈津を一気に志澤にのめり込ませるには十分の志澤の演出だったかも知れない。

逆らえない相手。

志澤の犬、と自覚するほどまでに身も心も預ける奈津。

結果、気まぐれに奈津を切り捨てる男ではあったが、

旦那(省吾 ドラマ版:眞島秀和)という、長年奈津を生殺しにしていた存在から

強引に解き放つための扉を、ドカンとブチ開けてくれたのだった。

恋愛に、持続性を求めてしまう奈津と

気に入らないことがあれば切り捨てる志澤。

一度でも、結びつきあって、お互いを喜ばせたことは間違いないのに。

切り捨てて、たったそれまでの出来事にすること。

切り捨てられたことで、幸せを感じた時間までもが闇へと突き落とされる感覚を覚える奈津。

幸せは、ここにはなかった。

出張ホスト(山下悠斗) ドラマ版:粟島瑞丸

奈津が省吾のもとを飛び出して、一人暮らしを始める。

その部屋に呼んだ出張ホスト。

プロと寝たらどうなるかという、興味がっずっとあった奈津。

しかしここで、その道の「プロ」とは?という壁にぶつかる。

おそらく、行為に没頭させてくれることがその道の「プロ」なのではないか。

余計な事を考える余地を与えてしまってはだめだ。

こういう、サービスを女性も本当に心から楽しめるものなのだろうか。

奈津の場合は、いくら自分が性欲が強いからとはいえ、

この出張ホストとの一夜によって、

自分は心が伴う行為じゃなければだめだ。

お金を払って満足させてもらえないとは。

と、思い知ることになる。

男性の場合は、その道の「プロ」でスッキリできるのに。

女性の場合はそうはいかないのかな。

なんて

後編「ミルク・アンド・ハニー」で、さらなる新境地に足を踏み入れる奈津をまだこの時の私は知らない・・・

 

 

岩井良介 ドラマ版:田中圭

大学時代のサークルの先輩。

「岩井先輩」「なっちゃん」と呼び合う。

ドラマ版では、日本での再会になっていたが、

私は岩井先輩との再会が香港であったことが

なんだか特別で、非日常のシチュエーションで好きだった。

それこそ、再会からのことがファンタジーであった、というように。

だって、岩井先輩のような男はなかなかいない。

心も体も許しあえて、

しかも親友のように、どんな悩みごとも(他の男とのことですら)

話せる。

岩井先輩の存在が一番のファンタジーのようなのだ。

奈津の強欲さを、じっくり満たせてしまう岩井先輩。

執筆のことでだって、語り合える。

最高じゃん!岩井先輩最高じゃん!

・・・・

だけど、彼には妻子がある。

(志澤にもいるんだけど。)

会っているときには満たしてくれていても

奈津の強欲さは、そんな可愛いものではない。

埋められない隙間を埋めてくれる誰かをやっぱり求め続けてしまうのだった。

 

松本祥雲  ドラマ版:マキタスポーツ

対談相手だった松本祥雲は、精神科医でありお坊さんであるという異色の経歴の持ち主。

浮世離れした世界を持っていそうで、期待が高まるが、

全部合わせて15分で事が済んでしまった。

これが、志澤や岩井先輩と出会う前だったら、違ったのかも知れない。

だが、いまや岩井先輩の手厚いトリートメントを受けてしまっている奈津だ。

これならしないほうがましだったかもしれない。

つまり、セックスレスだった旦那の省吾のほうがましと思えるくらいかもしれない。

行為中の奈津がめちゃめちゃ冷静で、

心の中の一人ツッコミが面白いのがこの小説の魅力でもある。

もう岩井先輩しかいないよ。うん。

そう思った矢先に次の出会いがあった。

大林一也  ドラマ版: 栁俊太郎

大林は、志澤の演劇関係者であった。

7歳年下の舞台役者で、物書きを目指している。

奈津に近づいたのは、仕事の斡旋が目当てというのもあったが、

奈津の仕事ぶり含めて惚れていく。

岩井先輩は、奈津が誰と寝ても楽しそうにその話を聞き、奈津が他の男としたことを再現したりしてみる男だったが、

大林は真っ直ぐだった。

他の男がいる奈津を許せない。

どちらか選ぶよう迫る。

それまで、余裕があった岩井先輩も、大林が出てきたところで、

他の男達とは違うということを勘付いて、ジェラシーに飲まれていってしまう。

妻子ある岩井先輩じゃなく、大林を選ぶのか。(耐えきれず去っていったのは岩井先輩だが。)

ドラマ版は、岩井先輩と別れたあと、心ここにあらずの奈津と、大林が浴衣で夏祭りにいって花火を見に行くところで終わる。

 

「ダブル・ファンタジー」のラスト

花火を見終わり、人混みではぐれてしまう奈津と大林。

土手の下へと脱げた下駄が転がって

奈津は一人でそれを取りに行く。

省吾がいたら、その下駄を真っ先に拾いにいっただろう。

岩井先輩は、人混みで絶対に奈津の手を離さなかっただろう。

大林の姿は見えない。

奈津は裸足で、土手を這い上がる。

性欲の強さは生命力の強さ。

それを表したようなラストシーンだった。

えっ?これで終わり??

このドラマは、全4話。

ここで終わっちゃうの??

前情報無しで視聴したため、話数も知らずに突然終わりを迎えてしまった。

そ、そんな!

とまどいながら、感想ツイートを漁っていく。

あ、これは小説が原作なんだ。

村上由佳さん。

じゃあ原作を読めば続きが・・・?

えっ、続編の小説がある?

岩井先輩の続投??

「ダブル・ファンタジー 上巻」

「ダブル・ファンタジー 下巻」

「ミルク・アンド・ハニー」

よっしゃ一気に読むぞーーー!!

と、ワクチン二回目結局全然副反応のでなかった私は、

元気いっぱいに書店に向かうのだった。

 

女性の性欲と向き合う

『セックス・アンド・ザ・シティ』

『NYガールズ・ダイアリー 大胆不敵な私たち』

などなど、海外ドラマで積極的に描かれてきたテーマを

日本で、果敢に表現したこの『ダブル・ファンタジー』

そもそも、女性が自分の性欲と向き合い探求していくこと。

その是非。

奈津のような存在は特別なのだろうか。

この作品にでてくる旅人とコーヒーの話のように

知らないほうが幸せ、と

探求せずに置くほうがよいのか。

果たして奈津はどこにたどり着くのか。

奈津の精神的・肉体的模索の日々を、とことんまで

追いかけてみよう。

後編に続く。

『ダブル・ファンタジー』『ミルク・アンド・ハニー』

『ダブル・ファンタジー』

作家の村山由佳さんによる週刊文春に連載された恋愛小説。

2009年に文藝春秋より単行本化

2011年に文春文庫より文庫化

第4回中央公論文芸賞

第16回島清恋愛文学賞 

第22回柴田錬三郎賞

文学賞をトリプル受賞。

2018年6月、WOWOWにて連続ドラマ化。

続編『ミルク・アンド・ハニー』

『週刊文春』で連載

2018年5月に文藝春秋より単行本化。