怪我を乗り越え「笑顔で」スケートができる喜びを噛みしめた「Hope&Legacy」
「SEIMEI」では、激しくそれでいて感情を前面に出さずに粛々と執り行う儀式のような神々しさが際立っていた。
それとは対称的に
この「Hope&Legacy」というプログラムでは
→(久石譲「View of Silence」と「Asian Dream Song」を合わせた曲。)
左足甲の怪我により長くスケートが出来なかったもどかしい時期を乗り越えて
「スケートを滑れていることが楽しい!」といった
純粋な気持ちに立ち返り
その思いのままにオーディエンスへと笑顔を届けられるプログラムとなった。
一度怪我で休んだ体が高度なジャンプなどの正確な感覚を取り戻すのには、羽生結弦をもってしてでもかなりの苦労があった。
しかも平昌五輪プレシーズン。
精神的にも、焦り・落ち込み・悪夢に苛まれることもあった。
しかし、そんな時期に味わった感情さえも、糧にしてこの「Hope&Legacy」という曲の中
「心から笑って」滑ることが出来た。
「笑う」という効能は凄まじい。
ただでさえ、表情が強ばろうとも仕方のないような、最高難易度のプログラムを毎回繰り広げてきた。
しかし「笑顔」の持つ力は、オーディエンスへと伝わるだけでなく、
何よりも羽生結弦自身の過酷な日々を乗り越えてきた満身創痍の心をこそ癒やしたのではないか。
男子フィギュアは四回転新時代へと突入し、より激しい戦いが繰り広げられる中で、
「笑顔」は固くなった心を柔軟にし、狭まる視野までもを押し広げてくれるような力がある。
この心に宿る「余裕」こそが、次の自分が押し広げていく可能性の余白にもなるのだ。
そうして、五輪シーズンへ向けて
「ノーミス」の呪縛、「絶対王者」の角印からの重圧を、みごとに乗り越えていったように見えた。
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