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羽生結弦が絶対王者になるまでのメンタルコントロールが鮮明に書かれた本「羽生結弦王者のメソッド」を読む(書評ブログ)

メンタル スポーツ モチベーション スポーツ

4年ぶりの全日本で得た悔しさ。これがこれからの羽生結弦をどう輝かせるのか?

「絶対王者」「帝王」そういった強さを、いつも求めてしまう。

強気な口調で、信じられない高みを目指している。

その羽生結弦を持ってしても、毎回の大会に照準を合わせるということは、至難の業だ。

肉体も、精神も、人間の持つものは常にゆらぎの中にある。

それを、自らコントロールして、操れなさそうな部分まで、操ろうとするのが一流アスリートの世界。

優勝した宇野昌磨選手のインタビューにも、今日の演技がみんなのベストではない、という一流選手同士だからこその、言葉があった。

しかし、自分を「弱い」と言った羽生結弦のインタビュー。

いつも言葉で自らに暗示をかけるように強気な語調がスタンスだった。

しかし、これは、次の勝ちに向かいだした一歩目をもう歩いている証拠だ。

今日の悔しさを自分以外の何かのせいにはさせない。

そうすれば、見ている人は安堵するかもしれない。

しかし、これから始まる自分との問直しの中で

自分でどうすることも出来ない部分を作っては、これからの自分が向かっていく戦いを、運のような不確定なものに任せる事になってしまう。

それでは、真実に自分の力で舵をきり、頭の中にあるイメージのパーフェクトな具現化までたどり着くという過程にそぐわない。

だから、今日羽生結弦が語った「弱い」は、次の戦いへのスタート地点だ。

私達は楽しみにしていいだろう。

羽生結弦の笑顔が最高の輝きをまた見つける日を。

以下は、今年8月に書いた記事です。

 

プルシェンコに憧れた少年が「絶対王者」羽生結弦になるまでの物語

冬が来る度。

フィギュアスケートのシーズンがやってくる度。

私達の前に現れる度に強くなる。

誰もがみたい「ヒーロー」像のそのままに。

今年の24時間テレビでは北海道胆振東部地震の被災地復興への願いを込めて

清塚信也さんのピアノの音色

そして厚真町町民吹奏楽団の演奏に乗せ

松任谷由実さんとともに

「春よ、来い」にのせて夢のアイスショーを開催した。

アスリートとしての世の中との向き合い方。
被災地への想い。
想いを人々へと届けられる演技。

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その友愛の精神と慈しみの心とともに、

彼には無敵という言葉が恐ろしく似合う。

ソチオリンピック・年平昌オリンピック2大会連続優勝

2014年世界選手権・2017年世界選手権2回優勝

グランプリファイナル4連覇(2013年 – 2016年)

三冠達成史上2人目 (2013年-2014年)

全日本選手権4連覇(2012年 – 2015年)

世界王者と呼ぶに相応しい彼がいかにして現在のような強さをみにつけていったのか。

スポーツの世界で「天才」とたやすく呼んでしまうには

彼らの日々は信じられない量の努力で満ちている。

こちらも読んでみる→羽生結弦はいかにして「夢を生きる」のか?インタビュー集にて自分の言葉で語られる絶対王者の内側(書評ブログ)

仙台のマッシュルーム少年が世界王者になるまでに歩んだ道のりは

「自問自答」「失敗と対策」「自分へのいらだちと絶対の期待」

どのように自分の心をコントロールし最高の精神状態で本番の演技に挑むことができるかという

メンタルコントロールの研究・追求の歴史となっていた。

この本の中は「名言」の嵐だ。

誰かに言われたのではなく、一つ一つ自分の中で徹底的に考え抜くことで見つけた自前の答え。

是非、そこから羽生結弦の本当の強さの秘密を紐解いていきたい。

この記事について

本記事は、要約・抜粋ではなく、この本を読む体験の中で考えを巡らせたこと

自分の中で噛み砕いた要素なので、実際の知識は是非書籍から純粋に獲得していただきたいと思います。

(書評としていますが、ほぼ感想文です。)

「言葉」で自分をコントロールする力

「もっと強くなりたい」

「もっと勝ちたい」

あまりにも純粋でまっすぐな思いが少年を突き動かしていた。

思うだけではなく、いつも口にだして自分の気持ちを隠さない。

こちらも読んでみる→感情的に生きることはプラスか?マイナスか?「人は感情によって進化した 人類を生き残らせた心の仕組み」(書評ブログ)

その言葉は、誰かに届けると同時に

いつだって、自分が一番近くで聞くことになる。

口に出した言葉は、暗示のように自分の中に必ず残っていく。

その言葉のイメージで、自分のこれからの行動や、パフォーマンスも変わってしまう。

だから曖昧な表現はしない。

言葉が曖昧になるときは、自分の気持ちもはっきりしていないとき。

そう、羽生少年はかなり早い段階から理解していた。

僕はレジェンドになりたい!人類初の何かで、僕だけってことをみんなに見せたいな。羽生結弦の名前を歴史に刻みたいんだ!

野口 美惠 (著)「羽生結弦王者のメソッド」より

その自らの放つ言葉の力で、少年は己の目標を屈託無く宣言し続けた

アスリートであると同時に哲学者。それが羽生の「考え抜く」スタイル

 

フィギュアスケートとは、なんとスリリングな競技だろう。

ジャンプを競う、スピンを競う、それだけでも十分に種目になるくらいの、要素を

いくつも重ねてまとめて、繋げて
「ノーミス」を目指すのだ。

それも氷の上で、薄い刃に全体重を乗せて。

期待の視線で埋め尽くすオーディエンスの前で。

これほどまでに精神力が試されるスポーツ。

こちらも読んでみる→浅田真央とWANIMAの「やってみよう」がなぜハマるのか?24時間テレビで少年少女たちと共有した想い~浅田真央 そして、その瞬間へ~(書評ブログ)

ジャンプの成功、失敗にはもちろん身体的要因もあるが、そのすべてを精神面が支えている。

筋肉をどう使うか、どんな角度で入っていくか、と同じように精神面をどんな状態に保って挑むのか、それにも日々鍛錬が必要なのだが

その「成功の感覚」は自分にしかわからない。
だから徹底的にジャッジする。

成功した時も、失敗した時も、自分の身をもって得た経験から、細かく分析し、必ず次に繋げていく。

その己と向き合う真剣さと、ぬかりなさは、さながら氷上の哲学者である。

 

試合後は悩む暇もないほど次の成功への対策を高速で考えている。

羽生結弦と言えば、演技後のインタビューの印象が強いだろう。
 
淀みなく言葉が紡がれ、アニメか、漫画のセリフかというほどの
コントラストの強いコメントの連続。
 
たった今演技が終わったばかり。
 
だが成功した時も、失敗した時も、すぐにコメントを求められる。
 
インタビューゾーンに、歩いてくるまでには
すでにどんな失敗もほとんど自分の中で質疑応答済みだ。
 
だから、落ち込んだりくよくよすることがほとんどない。
 
「悔しい。」
でも、改善の余地がある。
というか、もうすぐにでも今日見つけた改善点を練習で試したい。
 
 
そんな、意欲が彼を止まらせない。
 
点数がどうだろうと、今日の成功は勝ちパターンを正確に掴むために。
 
今日の失敗は、すぐに対策を立てて次の演技の完成度を引き上げるために。
 
何一つ、思い悩むべきことなどないし、羽生結弦にとっては、うじうじと悩むというよりも考える。
 
きっぱり答えが出るまで考え抜くという、戦法をとることで悩む隙すらなくしているのだ。
 
そのことが彼に周りが追いつけないほどの成長スピードを与えている。

東日本大震災を境に「被災者」として生きるのか「スケーター」として生きるかという葛藤

2011年3月11日 東日本大震災のあの日
 
羽生は、仙台のスケートリンクにいた。
 
なんとか、スケートを再開できるようになってからは、いちスケーターとしてではなく、「被災者」のスケーターとして、注目され、各方面で、被災者代表としてのコメントを求められる。
 
スケーターとしての、勝利への意欲溢れるコメントではなく
 
東北を元気づけたい、日本に元気を届けたい。
 
そのような、優等生なコメントを口にする日々に葛藤を覚える。
 
被災した東北の日本の勇気になりたい気持ちに嘘はない。ただ、あまりにも被災者としてのコメントを求められること。
 
 
 
海外メディアからは、津波の被災者というくくりで質問されること。
 
本当は、もっと今も被害が大きく大変な想いをしている人が沢山いることを知っている。
 
だから、同じように「被災者」とくくられることに、違和感を覚えていた。
 
自分は、被災者である前にスケーターだ。
 
その意思を自分に問い続け、確信を持って少年はさらに前へ進んでいく。

東北を、日本中を、応援するのか?されるのか?本当の自分の声と向き合う

被災地を

勇気づけたい。

元気づけたい。

その思いとスケート人生を結びつけるには

自分なりの答えが要る。

勇気づける。元気づける。という言葉の意味の範囲の広さをふわっとさせず、

具体的に自分は何をするのかという突き詰めが必要だった。

そして得た答え。

 

こちらも読んでみる→24時間テレビに思う~浅田真央の笑顔は何故こんなにも人々の心を救うのか?~ 浅田真央 さらなる高みへ 書評ブログ

 

「自分だけのスケートではない。」

自分1人から大勢の人に「与える」という考え方ではない。

沢山の人の支えと応援で僕は今このスケートリンクに立っているという気づき。

そして、結果として自分がオリンピックで金メダルを獲る。それが恩返しになる。

元気や勇気を「与える」「あげる」のだと意気込んでいた自分から

応援してくれる人達の想いと一緒に滑るスケートへ。

たどり着いたその答えが

絶対王者の羽生結弦へと、その強さを加速度的に押し上げていくのだった。

自分で命名したSEIMEI 言葉へのこだわり

 
言葉への執着が強い人だと思う。
 
一言一句。自分の意にそぐわない、本当の想いと温度差を感じることは言いたくない。
 
そんな、ストイックなまでの言葉を正確に扱うことへのこだわりがみえる。
 
羽生結弦にとって、運命の曲ともいえる「SEIMEI」は、映画「陰陽師」のテーマソングだが、
 
羽生自ら、あえて「SEIMEI」と名付けた。
 
安倍晴明の「晴明」からきている故に大文字であるが
 
いくつもの意味を持たせているという。
 
生命‥人間の持つみなぎる生命力の力強さを表現
 
または
 
声明‥いつも、声に出して自らの想いを体に、世の中に刻んでいくことを指すのか。
 
この、曲タイトルひとつとっても自分の意思で考え抜いて決断していくという、自分の、スケートのあらゆる細部までもを自分の魂で埋め尽くしたいというような渇望。
 
 
「おんみょうじ」という響きでは、あまり力強さや美しさにフォーカスできないことを
 
言葉選びの鬼である彼はしっかり見極め、
 
エネルギーがみなぎる響きに変えた。
 
どこまでも自分の本当に表現したいことを伝えきるために。
 
 

羽生結弦のメッソドとは

その情熱は尽きることがない。

飽くなき明日の自分への探究心。

もっと難しいことに挑戦したい。

その気持の連鎖反応で誰にも追いつけない存在になる。

この本には、そんな羽生結弦の葛藤と壁を乗り越える切実な日々が事細かに鮮明に描かれている。

こちらも読んでみる→どんな目標もやり遂げられる考え方とは?「やってのける 意志力を使わずに自分を動かす」(書評ブログ)

羽生結弦のメソッドとは

強くなる方法だとか、誰でも上手くいく魔法の技ではない。

それは紛れもなく、羽生少年が歩いた

精一杯を今日もまた明日もまたと超えていく挑戦の日々のすべてにほかならない。

作品情報

羽生結弦 王者のメソッド

(Sports graphic Number books)

野口 美惠 (著)

ノンフィクション 336ページ

文春文庫 より出版 2017年12月10日発行

価格 780円+税

単行本 「羽生結弦 王者のメソッド 2008-2016」
2016年3月 文藝春秋刊

1,550円+税

 

 

 

 

2022年の決意表明・プロのアスリートへ

2022年7月19日『決意表明』の場として記者会見にて、

プロのアスリートとしてスケーターに転向し、フィギュアスケートを続けていくことを表明した。

8月7日【公式】HANYU YUZURU – YouTubeチャンネルも開設

羽生結弦の魂に届くスケートも、

丁寧に紡がれた言葉のきらめきも

これからも受け取っていきたい。

プロ転向関連インタビュー

・sportiva 【羽生結弦・単独インタビュー】プロ転向は「結果という形がないからこそ怖いところもある」「いろいろなことを勉強し続けなければいけない」

 

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羽生結弦の振付師「『プロ転向おめでとう』と連絡したら、すぐに彼から…」シェイリーン・ボーンが振り返る「ユヅは自分の『声』を持っていた」